« 吉本ばなな『イヤシノウタ』 | トップページ | 石井郁男『はじめての哲学』 ヨシタケシンスケ・画 »

2016年7月 2日 (土)

清水義範『考えすぎた人 お笑い哲学者列伝』

本屋でそのタイトルを見かけて、買わないわけには行かなくなり、久しぶりに清水義範の本を読みました。

滅法面白かったです。

古代ギリシアから現代に至るまでの代表的哲学者の思想と人生が、ユーモア小説として茶化されているはずなのに、妙なリアリティと愛情を持って描かれています。

あとがきにあるように、著者は「この小説集で取り上げた哲学者たちの思想を、私はすべて理解しているとは言えない。真面目に勉強したのだが、ギブアップなのである」(320頁)とあります。

でも、ギブアップというのは28冊もの参考文献を読んでのことですから、やっぱり、そのまま受け取るわけにはいきません。思想と伝記的事実が絶妙にからみ合って小説化されています。

ヘーゲルの弁証法的痴話喧嘩では、奥さんが次第にヘーゲルの弁証法的な言い方に慣れてきて「一度は否定しても、結局は否定の否定、つまり肯定するのだから、話の真ん中をきいていなければいいのだ」(180頁)と得心するところなんか、笑えるけど、本当にそうだったような気がしてきます。

ハイデガーのところはハイデガーにインタビューする編集者に付き添う西原理恵の文体模写が見事で、オチもなかなかです。

ウィトゲンシュタインの章は「理解しえぬ哲学者については、沈黙しなければならない」って、できることならウィトゲンシュタイン本人に聞かせてあげたいような台詞です。

哲学者って変なやつだということが、リアルにわかる気がしてくる不思議な本です。

(平成27年550円税別)


|

« 吉本ばなな『イヤシノウタ』 | トップページ | 石井郁男『はじめての哲学』 ヨシタケシンスケ・画 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。