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2016年12月

2016年12月30日 (金)

柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』

「仕事が速い」「調整力がある」・・・こんな人が危ない!

と帯にあります。

「真のできる人」になって自分の会社を元気にする方法が説かれています。

仕事を要領よくさばいているだけの能吏型の人は、本当は組織全体のことを考えず、目の前のことに追われているだけで、会社にとってマイナス要因にしかならないというわけです。

これは本当にその通りで、その「さばく」ことすら実際はよくできなくて、できる人のふりをしているだけの演技派も少なくないですが、いずれにしても、そういう人びとが全くといっていいほど物事を考えていないのは確かで、組織改革の最大の阻害要因になっています。

本書では会社の中にざっくばらんに話のできる場所を作り、自由闊達な組織風土を作るための具体的なアイデアがいろいろ展開されていますが、特に課長クラスで「コアネットワーク」を作ることができたらいいでしょうね。そんな人が10人集まれば組織は動かせるというのも、わかる気がします。もっとも、硬直した組織では実際に10人集めるのも大変ですが。

と、読みながら、自分の職場のことを考えると、日暮れて道遠しの感がありますが、大学なんてところは一番ダメな組織ですからね〜。せめて学生に迷惑がかからないように知恵を出していきたいと思っています。

(2016年PHP研究所1400円税別)

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2016年12月21日 (水)

髙山正之『変見自在 朝日は今日も腹黒い』

いつもながら、へぇ~と驚かされることや、ショッキングな事実が書かれています。

ポンソンビーの『戦時の嘘』から引かれていたりして、これは読まなきゃと思ったら、翻訳は出てなかったりします。

原書に当たらなきゃ。

本書では随所に歴史的事実のダイジェストが実にわかりやすく書かれているので、いろいろ勉強になります。

中東史、ローマ史、ペルシャ史、東南アジア史など私が不勉強なところに理解の手がかりを与えてくれていて、ありがたい本です。

それにしても直截的なタイトルですが、序文のエピソードを読むと、なるほどそんなこともあったんだと納得できます。

しかし、朝日自体が売上が落ち込んでますから、
これからは批判より先に同情しなければならないような次第になりそうな気もする今日このごろです。

(新潮社2016年1400円税別)

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2016年12月12日 (月)

西加奈子『 i アイ』

すごい小説でした。

西加奈子さん、さすがです。

阪神淡路大震災から9・11、3・11、パリの同時多発テロ、シリアの難民問題といった世界の悲惨な事件がすべて登場します。

仏教で言う「縁」のようなつながりかたです。

シリア生まれで、アメリカ人と日本人夫婦の養子として育ったアイという女性が主人公です。

この設定と人物造形、そして文章のスピード感は、小説世界の中で見事なリアリティを獲得しています。

それにしても、こんな小説を書きたくても書けない作家はゴマンといることでしょう。

何度も言っていますが、将来のノーベル文学賞候補に勝手に推薦しちゃいます。

(2016年ポプラ社1500円税別)

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