T. A. シービオク/J. ユミカ=シービオク『シャーロック・ホームズの記号論ーC. S. パースとホームズの比較研究ー』
久々の投稿です。これからまた折に触れて書いていきます。
本書は1981年に出たときに読んで以来の再読です。論考として見事だけでなく、遊び心も満点の粋な本です。言語学者や人類学者で一般人向けに面白い本を書く人が最近はあまりいないんじゃないかと先日娘と雑談しているときに、この本を思い出しました。シービオクがハンガリー人だったのもついでに思い出して、読み返したくなりました。
語り口が見事な本ですが、当時あまり私にはピンときていなかったパースの思想の勘所がきっちり捉えられていて感心しました。推測 abduction の論理ですが、それは帰納とも演繹とも異なる無意識的な、そして、情動的なコミュニケーションのことです。これを著者はシャーロック・ホームズの観察に基づく推測と重ね合わせて論じています。
この議論を手がかりにしながら、これからパースも読み返してみましょう。
そうそう巻末の山口昌男との対談も面白いです。当時は「記号論」流行ってましたね。
翻訳はわかりやすくリズムのいい文章で、さすが富山太佳夫さんだけのことはあります。
(富山太佳夫訳、岩波現代選書、1981年)
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