トマス・ネーゲル『哲学ってどんなこと? ーとっても短い哲学入門』
何年ぶりかの更新になります。備忘録として書いておきます。
いい本でした。大哲学者の名前などは一切出さず、哲学的思考を初学者向けにストレートに、しかし小難しくない形で展開しています。
他人の心、心身問題、言葉の意味、自由意志、正義、死、人生の意味といった問題が語り口は易しく、しかし、高度な議論を実にうまく語っています。本書は世界中で翻訳されているとのことですが、そうでしょうね。
こういう思考法や物の見方を大学の教養科目で学生に教えるのは至難の技です。大哲学者の人名を覚え、議論を暗記するのならいくらでもできる学生はいるのですが、自分で考えることというのは、こちらが教えたとおりに考えることではないですから。
これは自分の人生を楽しむということと同じかもしれません。先生に教わったとおりに考えるのは生真面目な学校秀才に任せましょう。
(岡本裕一朗、若松良樹訳、昭和堂1993年1942円+税)